富山・いのちの教育研究会

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「生きる」とはどういうことか、大人と子どもが一緒に考えるサイトです。

研究実践報告

話題提供              
話題提供者  坂田 和彦 先生 (氷見市立 朝日丘小学校研究主任 )
       「朝日丘小学校のいのちの教育の取り組みを通して」 

 本校は氷見駅から歩いて10分くらいのところにある。生徒数は3百人位。昨年度より2か年、文部科学省より「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業-命を大切にする心をはぐくむ教育の推進に関する研究-」の研究指定を受けた。17、18年度に小杉小学校で行われた研究と同じものである。先ほども挨拶の中で話も出たが、全国的に残虐な事件も多く、命を軽んじている事件が多くなってきたということからも、このような実践の大切さが分かる。

 研究主題を「生きることの素晴らしさを感じ、自他の命を大切にして、よりよく生きようとする力を高める道徳教育のあり方」とした。

 先ず子供たちにアンケートをとった。
身近な人をなくした経験が約半数。誕生に出会った経験については、ないほうの子供が多い。死について家族で話した経験は更にパーセントが下がってくる。これらのことから、命の大切さ、生命の大切さを考えなければならないということがよくわかる。しかし、我々教員の意識としては、「命の教育というと一体、何をしたらいいのだろうか。道徳の授業で生命を尊重したらいいのか」というような、何をしたらいいのかわからないというのが正直なところである。子供たちの意識というと先ず、「命は動物や植物にもあるけどあまり意識してなかったな」というところだと思う。飼っている小動物が死んでも、命が失われたというよりも何かが壊れたとかなくなったという感覚かと思う。
教員についても同じようなことが言える。命を大切にするということはどういうことか先生も良く分かっていない。命を大切にすることの意味から研究をスタートすべきだと考えた。

命を大切にするということは先ほどからアンケートにもあったように、「生命の尊さを実感すること」、二番目に「夢や自信を持って生きるということ」、三つ目に「他者への思いやりを持つということ」、この3つが命を大切にするというように意味づけることができると思う。このように私達は共通理解をした。そしてこれらを「きらきら」「いきいき」「ほかほか」という三つのキーワードで表した。

 そしてこの3つの言葉を三つ葉のクローバで表し、各教室に掲示した。三つ葉のクローバの意味は、「全ての言葉で命の教育を」ということだ。少し詳しく話すと、四つ葉のクローバというのは一生懸命探してやっと見つかる特別なものである。三つ葉はどこにでもある。命の教育というのはすごく特別なことをするのではなくて、どこにでもある教育で、当たり前のことをしていくのが命の教育なのだという意味が込められている。
 
 私は昨年本校に赴任し、5年生を受け持った。クラスはいわゆる学級崩壊で、研究主任の仕事は非常に楽しく、ここにいる教頭、教務に助けられながら次々に仕事を与えられることそれ自体は楽しいのだが、教室がとにかく辛かった。去年の今頃、自分のクラスの子供たちさえしっかりできないのに何が命の教育かと思った。そんなとき、特別な命の教育よりも、当たり前のことを当たり前にできるようにすることが大事でないかと自分自身に問いかけた。そんな気持ちから、三つ葉のクローバのことを思いついた。我が家の庭で三つ葉のクローバを一つ見つけ写真に撮り、それぞれの葉に「きらきら」「いきいき」「ほかほか」の言葉を当てはめた。それを教師用の研究構想図にしたのがスライドのこれである。各教科、道徳、総合的な学習、校外活動、特別活動など全てのことが道徳教育につながっているのだという意味を表している。先生方もこの三つ葉のクローバだけではわかりにくいというので、低学年には低学年なりに噛み砕いて教室に掲示してくださっている。

 例えば、「きらきら」は生きものに優しくして命を大切にすること、「いきいき」については夢や希望を持ってよりよく生きよう、ということまでは分かるが、低学年には伝わりにくい。「いきいき」を「正しいことを進んでする」というようにすると低学年にも分かる。「ほかほか」の思いやりも「友達と仲良くする」などと工夫して表示していただいている。また、教室の素敵な出来事を、「きらきら」、「ほかほか」、「いきいき」、のそれぞれの言葉を、星型、ハート型、ロケット型の形に表して、このようなことが教室であったよというようにそれぞれ当てはめて捉えさせている学年もある。「ほかほか」については、○○さんに「そんなことをともだちに言ったらだめだよ」と注意してあげたという例もあった。

 また、きらきら、ほかほか、いきいき、と言って、命を大切にすると言っても、学年の発達段階に応じてレベルが違うというので一覧表にしたのがこれである。自己肯定感に関することを例にとると、低学年の場合は「勉強や自分がやらなければならない仕事はしっかりやる」となる。中学年になると、「自分でやろうと決めたことは最後まで粘り強くやりぬく」高学年になると「より高い目標を立て、希望を持ってくじけないでやる」となる。夢や希望を持って生きると言う同じ内容でも、表現を変えて分からせ、それを明確にすることで授業のねらいもはっきりしてくる。

 研究の視点は三つ。視点1は「豊かな体験を通して、生きることの素晴らしさを感じ、自他の命を大切にする道徳教育の推進」、視点の2は「道徳の時間と教科、特別活動、総合的な学習の時間の有機的な関連を図った総合的な関連の構想」、視点3は「家庭や地域との連携の充実」、この3つの視点について説明したい。

 視点1の「豊かな体験」。これについては、いろんな体験をさせようというような気楽な感覚で取り組んでいる。ハムスターの飼育、自然保護委員の方から学ぶ、学芸員の方から地区のことを学ぶ、キャノンジュニア・フォトグラファーというキャノンの企画に乗せていただきその写真から学ぶというように。その写真は六本木フィルズやヒミングという氷見市のイベント、24時間テレビのチャリティイベントで写真展を行った。
そのほか一般的なものとしての立山登山、宿泊学習、スキー学習、水生生物の調査、お年寄りとの昔の遊びを通した交流、地震の体験、砂防教室、そして本校で行っている全校縦割りグループのクリーン作戦がある。クリーン作戦も命に係わる活動なのだよと子供たちには位置づけている。ゴミを拾って、植物やいろんな動物にいい環境を作ることは「きらきら」になること。それから一生懸命仕事をすることは「いきいき」。また、友だちと協力するのは「ほかほか」だねと話している。たかがごみ拾いだが、このように道徳教育に結び付けている。同じく郊外活動で、秋のウォーキングランと言って、オリエンテーリングのようなことをしている。これもいろんな植物や動物を見つけようというのが「きらきら」になるし、クイズを設けて、しっかりと勉強しようというのが「いきいき」というように位置づけられる。

 視点2の、教科との有機的な関連についてであるが、先ず命に関わりがあると思われるような単元を一覧表にしている。
また、「輝け命、音読集会」というのを行ってきた。「国語←→全」とあるが、これは「きらきら」「いきいき」「ほかほか」のいろんな詩が出てくるからである。読まれた詩は各掲示板に貼り出してある。
5年生が「健やかトーク」という、地域の校医さんと一緒に勉強する学習会を行っている。歯や眼、内科に関する体のことなどいろいろと教えてもらったり、調べたことを発表したりする。
また、理科で自分だけの花を育てたり、一人で2匹のメダカを育てたりしている。
ヤングヘルス・セミナーでは、保健婦さんに子供の誕生の話を聞いたり、車椅子を何台か借りて使う体験をしたりした。これらの活動を道徳に関連付けて行ってきた。

 視点3の家庭地域の連携についてであるが、まず授業参観で全学年が道徳の時間で学習参観を行った。また学年だよりに命のコーナーを作り、勉強をしたこと、これからの予定を伝えている。さらに道徳教育推進委員会が10年以上前から本校で設けられている。地域の一般的に言う行政など関係のある方、関心の深い方を呼んでいろいろと意見を伺い、子供について地域の様子を聞いたりして年間3回実施されている。

 このように、3つの視点で進めている。次に、昨年度行われた授業実践を紹介する。
先ず生命尊重の「きらきら」に関することだが、主に道徳での生命尊重題材として、「おたまじゃくし」「羽根のないカブトムシ」「ヒキガエルとロバ」等の道徳の時間の授業研究を行った。「母の日記」では、この画面のように保護者からの手紙を読んで学ばせている。理科では「季節と生きものの様子」「魚や人の誕生」等を通して「きらきら」に繋がることを学んだ。

 続いて「いきいき」、つまり自己肯定感についてだが、夏休みに体験したことをみんなに元気良く伝えようという国語の学習をした。自分の思いをハキハキと元気良く伝えるのが、1年生の目標である。5年生の命きらりプロジェクトは、世界臓器移植者水泳大会で金メダルを取った太田さんから学んだり、氷見市在住の車椅子バスケットやチェアスキーをされる円山さんなどの講演を聞いたりして、命を輝かせるとはどのようなことか考えた。道徳の「ミホの挑戦」。これは障害のある人が義足をつけてトライアスロンに挑む資料である。

そして「ほかほか」つまり他者への思いやりに関することであるが、最近問題になっている二酸化炭素を減らそうという取り組みを行った。これはいろんな人たちに対する思いやりから二酸化炭素を減らそうとしたものである。
先ほど出てきた車椅子体験と関連付けて、「知らんぷりはできないよ」の資料を扱った。耳の不自由なお年寄りに話をするとき、どのようなことに気をつけなければいけないかについて役割演技をしてみた。車椅子体験についても同様にやってみた。

 このように昨年度、実践をしてきて、4つ問題点が出てきた。
①は、道徳の時間での主発問や切り返しの発問のあり方である。子供の考え方の捉え方と授業の進め方について更に研究を深めて行きたい。これは一言で言えば道徳の時間を多くこなすことだと思う。本校では道徳の時間に行ったことを「1時間に一短冊」勉強したことについて、子供がいいなあと思った一言を、教室の横に短冊にして掲示していくことにした。

②は、栽培の畑が離れているので、関心や意欲を途切れさせないで継続させることが難しいことだ。教室の環境を考え、身近に動物などと触れ合えるようにしたい。本校では野菜畑というものがないに等しく、荒地に耕運機を入れてとりあえず野菜を植えようと考えた。今年度、花壇を作ったり、学校の前を「にこにこ挨拶通り」と名づけて、プランターを植えたり、5年生がはと麦の栽培を始めたり、めだかを孵化させるのに用水路に捕まえに行き、一人に2匹を確保するなど、自然と触れ合う機会を設けてきた。

 ③は、各教科や総合的な学習の時間と道徳の時間との関わりについて研究を進めてきた。しかし、研究事後の協議では、公開された授業についての話し合いが多くなり、関わりについて考える場面が少なかった。同学年で道徳の時間とその他の授業を同時に公開するなど、有機的な関連についてしっかり考えられるようにしたい。

 残された問題の④は縦地域ぐるみの道徳教育を推進するために学級懇談会で命を大切にする心を育むことについて意見交換を行って行きたい。この画面は先日2年生が校内研修を行ったがその時のワークシートである。これは「喧嘩をした時にはどうしたらよいと思うか」という意思決定を求めるワークシートになっている。道徳についてこのようなシートは99パーセント不適切と言われるが、このような具体的なことを問うことによって、保護者がコメントを書きやすいのではないかと担任は考えた。感想を求めるよりも子供の勉強が親に分かるようなシートにした。

 また、朝日丘ボランティアセンターというのが今年度発足した。この地域は一人でボランティアをする方々が多いが、この方々が横のつながりを持とうということで、大人の団体として前述の組織を作った。来週はこの方々と一緒にごみ拾いの予定である。

 先ほど残された課題③について、道徳の時間と他教科・領域の授業の同時公開について話したい。6月に行った道徳の時間で、道徳の時間と他の教科との関連を図るには、①他の教育活動を道徳の時間の話し合いに生かす。②道徳の時間を他の教育活動の時間に発展させる。③関連させたい他教科を同時に進める。以上のどれが良いか、検証を行ってみた。

 指導案は、第4学年道徳・体育科学習指導案として、A4用紙の左側に道徳、右側にマット運動としたものを作った。道徳的価値が関連しているところに、太字にして、分かりやすくした。全体構成だが、真ん中に道徳の単元、左側に特別教育活動、右側に教科と総合的な学習の時間を組んでみた。道徳のこの縦に並んでいるのが本時で狙う価値で、それについてがんばる時は周りの人の励ましも必要かと思い、思いやりのところの単元もずらして入れてある。これは道徳の資料であるが、つづり方コンクールで通った作品集のもので「運動嫌いや体育嫌いの僕」が主人公。家族の励ましでテレビ体操をはじめ、足掛け後転ができるようになった。終末には、できなかったことを毎日練習することによってできるようになったことを話している。

 できたときの本人の喜び、周りの子供たちの拍手が気持ち良い。くじけようとする子供ががんばってみようと励む子供に共感する児童が多かった。できた本人が変身したと喜んだとき、担任は何が変身したのかと問うと、クラスの生徒は「心」と答えたことに感心した。技術ではなく、「心」であると捉えたところが素晴らしいと感じた。体育の面からは技術を伸ばしたいと言う強い気持ち、苦手を克服しようとする気持ち、他人と比べるのではなく、最初の頃の自分と比べる心ができていた。友達からの励ましも多く見られた。関連して学習した、思いやり、親切の価値も学習した。どのような教科でも道徳的な価値を見つけた子供を賞賛して、広めることによって道徳的な心情が高まっていくと思う。それは他の教科にも応用されるべきだと考える。

 以上、本年度6月までの状況を発表してきた。一言で言えばこのような教育のねらいは子供たちの輝く未来に向けてがんばって行きたいということである。なお、本校の実践は小杉小学校の実践から多くのことを参考にさせていただいていることを付け加えておく。 (完)


  [  参考 ]

    朝日丘小学校ホームページ 
       http://www.city.himi.toyama.jp/~60010/index.html
    研究会案内 
       http://www.city.himi.toyama.jp/~60010/pdf/annai(20).pdf
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by toyama-inochi | 2008-10-05 21:48